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白の旋律〈白の光〉~旋律№26 膣内花火~

〈白の灯り〉

旋律№26 膣内花火
                                白

1 少女の賛美歌
 
クリスマスの朝も納豆で済ませたアタシは、いつもと同じ。歯を磨く。黒いハブラシで。その時間がいつもなぜだか永く感じる。どうしても慣れないの。やっと済んで、コップを置いて、しばらく眺めるでもなくそこに立ってみる……。すると、何も起こらないんだから。
一瞬、部屋の隅がナニか黄色く光った気がしたの。左目の端にまだ残像が。
一年で一番自由になれる日、それがクリスマス。時計の針のその音がいつもに増して存在感を出す、チックタックロック。
 ナニ着たって同じ。どーせ白いコートの内側なんだから。ワックスで髪形をつくってヨソ行き風に、あとそれと、バッグも忘れないようにだわ。何一つ確認の要らない、今日は自由のクリスマス。
 外の世界は、アタシの目から見ればいつもと同じ。ただ、気分一つで見え方が変るんでしょ、いつもいつも、いつになってもアタシの目の前は赤信号でした。
 雪が降らなくて、空気だけ寒くって、こんな日にどうして街には人々が溢れて、にぎやかなんだろう。それを掻(か)い潜(くぐ)るように独り、この日の空気だけでも楽しむか。

「ホントハネ、オレンジ色のマフラーガ欲しかったの」

そうだ、献血に行こう。あそこなら数分でも街にいられる理由になるわ。 人々、光、音、ぶつかってすり抜けて、かわして、階段を登って、さあ、
「こんにちは、こちらに御記入を、今日は献血手帳はお持ちですか?」
「はい。」
「それでは掛けてお待ち下さい。」

早く走るよりも永く走り続けていたいの

「アサガオさん、中にお入り下さい。」
「はい。」
「中へどうぞ。」
適正検査を終えて、我が細き腕にこれから刺さり、血を吸い取るであろう針の先に一点集中。なにか、自分の腕じゃないって考えれば、さほど辛くもないんだよ。
「フゥーッ、」始った。
つけてあるテレビにも目をくれず、己の血液の流動をただじっと見つめる。ただじっと。400ミリリットルのパックが少しづつ膨らんでゆく。アタシの血で満たされて、なぜだか仲間意識が芽生える。そこには自分がもう一人。
「ハァーッ」終わっちゃった。
 軽いフラツキを看護婦に覚られぬように待合室の椅子に座り、セルフのコーヒーとクッキーをいただく。なんか落ち着く。ここにいる人たちはみんなアタシと同じなのかしら。中年の男性と連れのボウヤ、二十代前半と見られる女性、来慣れてそうな人も何人かいるわね。ここは独りでいるには都合がいい。
また外に出て、服屋に向かう。目に映るこの世界が好き。血を抜いた後って、いつもと世界が少し違って見えるのよね。なんていうかこう、ボヤケテ見えるじゃないけど、だからなのかな、音とか光のそれも特に強いのだけが引き立って目に入ってくるの。なんだかウレシイワ、それがね、気にしたくないモノを自動的にそう出来るって。もうアタシ、周りなんか気にしなくなるの。気が付くとね、男性服売り場で見てたりねっ♪
 白いのを一着買って、今度はカフェに行こう。いつもこの街に来た時に行くガラス張りで、それを理由に行き交う人々をむ無料で見放題。
 「いらっしゃいませ、ご注……」
「アイスコーヒーショートで。」
「はいかしこまりました。二五〇円になり……はい丁度お預かりいたします。」
ここも人でイッパイね
「お待ちどう様です、ごゆっくりどうぞ」
シロップとミルクを一つずつ取って座る。その隣にはイイ感じの男の子。もちろん意図的よ、空いている席なんてのは他にい く ら で も ♪
バックから本を取り出して、じっと読む。隣の子を目の端に映したまんまよ、どんなこと考えてるんだろう。右手の指輪の意味、ケータイを頻(しき)りに気にしているみたい。いかんいかん。
外を見ると、どこかみんないつもより足早だ。なんだか座って見てるだけで疲れるわ。次、どうしようかな、まあいつもの流だしなー。
残りを一気に飲みほして店を出る。その際すれ違ったキレイな女性。振り返ったって。前に行こーゼ♭
 あのカフェの後はいつもこのお店って決まっちゃってるのよね。白いモノを多く扱っている。まっ、それが売りか?別に何を買うわけでもないんだけどね、ここにいるだけで救われる気がして、やっと楽になれる気がして、それでね。コップにシャツ、ペンやカーテン……全て白くて、シロクテシロクテ、アタシ、ここの住人になっちゃいたいわ。お揃いの白い陶器の入れ物に入ったシャンプーとリンス買っちゃった♯
 足どりはまだフラツキ、視界には霧がかかったようで、その感覚のまんま今度は雑貨屋に行く。
 さすがにクリスマスだわ、人、モノ、音、それに光、こんな日に働きに出て来ている店員の背景が少し気になり、店を周りながら空気に浸る。ケータイのストラップや化粧品、文房具なんか見たりして、キャンドル売り場の前で足を停める。今は香り付きのヤツがあるのかぁー、きっと人気なんだろうな。その中の一番チッコイのを手にっ取ってフーッと嗅いでみる。やっぱりセッケンの香りが一番好き、どんな気分の時にでもこの香りと色で自然にアタシは救われるの。
「またね、今日はあんましお金持ってきてないの、ゴメンネ。」
 ボヤケたような視界の中では大勢の人間でさえも独立の風景と化す。改札を通るとき、自分とすれ違う人々。きっと、これからなのね。
 帰りの電車を待つ間、今日買ったモノをもう一度確かめる。白のロングティーシャツと、シャンプーとリンス。あとそれと甘いオカシ。同じく待つ人々を見回すと、独りでいる人が多いみたい。なんだかイヤだわね。
 ウォークマンで音楽聴いて待つことにした。♪ ♭ ♯
アタシ、メロディ奏でるよりも、リズムキザムのが好き。昨日ね、駅のプラットホームでメロディに出会ったの。生まれてきて始めてメロディに出会ったのよ。気分屋の一生♪。
 さすがにこの駅で降りる人は多い。おかげで座って帰れる。向かいの窓から外の景色を眺めているつもりだった。視界に居眠りしてる中年のオヤジが入ってきて、それでウザイ。何か違うことを考えよう、何を考えようか、それを考えよう。
 写真がキライ。後ろを振り返れば、楽しかった今がつたない過去になってしまうから。カエリテェー。
 やっと開放された。外に出ると生きている気がする。そうしなきゃいけない気にもなるわ。エスカレーターの感覚が心地良かった。この視界の性もあったと思う。宙に浮いて、そのままずっとフワフワしてる感じ。
 疲れた駅員の顔と、忙しくパカパカする改札が、再びアタシを二次元世界へと引き戻す。こんなもんよね。
 サッサと家路を歩く。この動いてるのってホントにアタシの足なのかしら。なんだかダルイワ、アタシ使い古した主婦みたいね。

―――いってきます、いってらっしゃい―――

 この部屋は寒い部屋だ。
だから、パジャマのかわりに夜を着る。

明日、オレンジ色したハブラシを買いに行こうと思うの。
 
今日アタシは、昨日の日記をつけました。

花言葉は「儚い恋、わたしはあなたに結びつく」

製作期間   二〇〇六/三/十五(水)~二〇〇六/三/二十一(火)
編集完了日  二〇〇六/三/二十二(水)

手を出すな! Music 手を出すな!

アーティスト:GAKU-MC/桜井和寿(Mr.Children)
販売元:トイズファクトリー
発売日:2006/05/31
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コメント

毎回、ご訪問ありがとうございます★★とても嬉しいです。私は、美容ネタ中心で退屈してしまうかもしれませんがこれからもよろしくお願いしますねえ★

投稿: きみたぁん★ | 2006年7月11日 (火) 19時16分

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